市場で「別格」とされる東京湾の特大サイズの太刀魚。その多くを支えているのが、延縄(はえなわ)という漁法です。釣りファンには馴染みが薄いかもしれませんが、超高級の太刀魚を語るうえで欠かせない存在です。
WHAT IS延縄とは ― 一本の幹縄に、たくさんの針
延縄は、一本の長い幹縄(みきなわ)に、枝のように多数の釣り針(枝縄)を等間隔で付けて海に流す漁法です。広い範囲に多くの針を展開できるため効率がよく、古くから多くの魚種で使われてきました。針一本ずつに掛かるので、網を使う漁と異なり、魚への負担が少なく、良型を傷つけずに獲りやすいのが特長です。
シーズンは5月末〜9月までで、特に序盤は釣りのスタート時期と重なります。しかし、獲れる魚のサイズが大きく異なります。釣りでは指2~3本程度の太さの極小サイズがほとんどを占めるにも関わらず、漁場もほとんど変わらない場所で片口イワシの生き餌を用いた延縄漁では、平均して1kg以上のサイズが連発するようです。
シーズン中盤以降では、活き餌からから塩漬けのイワシに餌が代わり、やはり釣りではなかなか出会えないような神龍クラス(130cm:2kg以上)のサイズも頻繁に獲れるようです。
一度漁に同行させてもらいましたが、その手捌きと効率の良さはまさにプロの仕事。私たちの日々の食事がどのように支えられているのかを実感することができました。
VS ANGLING釣り(遊漁)との違い
私たちが船宿から楽しむテンヤやジギングは「遊漁」、つまりレジャーとしての釣りです。一方、延縄は魚を商品として水揚げする商業漁法。目的も規模もまったく異なります。だからこそ、太刀魚の「サイズの計り方」も立場で変わります(漁師は重さ、釣り人は指の本数と長さ)。延縄でとれた太刀魚は市場という土俵で評価される、いわば“プロの一尾”なのです。
WHY PREMIUMなぜ延縄の太刀魚は高く評価されるのか
理由は大きく二つ。まず、傷の少ない良型を丁寧に揚げられること。身がやわらかく鮮度落ちの早い太刀魚にとって、扱いの丁寧さはそのまま品質に直結します。もう一つは、ブランド力。良質な大型が水揚げされる東京湾の太刀魚は、市場で高い評価と価格を得ています。スーパーの手頃な切り身と、料亭に並ぶ一尾――その差の一端を、延縄漁が担っているわけです。