ここ数年で人気が高まっている、半生仕上げのアジフライ。外はサクッ、中はふわトロ。口に入れると、なぜこんな食感になるのか不思議なくらい、身がほどけるように消えていきます。「無重力アジフライ」なんて呼び方をされることもあります。今回は、走水産のプラチナアジを使い、ラード、生パン粉、バッター液、タルタルソースまで、とことんこだわって作ります。
半生プラチナアジフライの重要なポイントは3つです。揚げ油にラードを使うこと、アジを揚げる直前まで冷蔵庫でしっかり冷やしておくこと、そして揚げたらすぐに半分に切ること。この3つで、外は香ばしく、中はふわトロの半生食感に仕上げます。
INGREDIENTS材料
アジ
- プラチナアジ(東京湾・走水産):8匹
- 塩:少々
バッター液
- 小麦粉:大さじ4
- 牛乳:30ml
- 卵:1個
生パン粉
- 食パン:2枚
揚げ油
- 豚の脂身:1kg
- 水:100ml
タルタルソース
- 福神漬け:大さじ1
- 紅生姜:小さじ1
- ゆで卵:1個
- 玉ねぎ:1/4個
- マヨネーズ:大さじ3
- パセリ:適量
FISHINGまずはプラチナアジを釣る
最初の工程は、アジを釣ることです。
走水周辺で釣れる、脂の乗ったブランドアジ。大きなアジには大きなアジの美味しさがあり、小さなアジには小さなアジの美味しさがあります(走水=横須賀だからか?文が進次郎っぽくなってしまった)。同じ日に同じ場所で釣れた魚でも、脂の乗り方や身質にはかなり個体差があります。
ただ、自分で釣った東京湾のブランドアジなら、それだけでもう最高の食材です。
船の上で締め、しっかり冷やして持ち帰ります。今回は刺身ではなく揚げ物にしますが、半生で仕上げるため、鮮度の保持は重要です。
FILLETアジを三枚におろす
フライを作る時は数をまとめて処理することが多いため、最近はゼイゴと鱗を先に取らずに処理してます。特にゼイゴ取るのは面倒なんですよね… 硬いしチクチク刺さるし。で、まず、胸びれの後ろ側に少し角度をつけて包丁を入れ、頭を落とします。腹を開いて内臓をこそぎ出し、そのまま大名おろしで身を取ります。
次に、腹骨をすき取ります。
30cm以上の大きなアジは、血合い骨も骨抜きで丁寧に抜きます。このとき忘れやすいのが、頭を落とした断面付近に斜めに入っている骨です。
この部分の骨は太く、残っているとかなり口に当たります。せっかくほかの血合い骨を全部抜いても、ここを忘れると骨抜きをした意味が薄れてしまうので、必ず確認します。
SKIN皮とゼイゴを一度に外す
骨を抜いたら、最後に皮を剥きます。
頭側の身が厚い部分から、指で皮を少しだけめくります。その隙間に包丁の背を当て、身を押さえながら皮を一気に引っ張ると、ゼイゴも含めて皮がペロッと外れます。
ただし、腹側の身はかなり薄いので注意が必要です。
力を入れすぎたり、包丁を当てる角度を誤ったりすると、腹側の身が皮についていき、ボロボロになってしまいます。包丁の背で腹側の身を特に押さえながら、皮だけを引っ張るイメージで外します。
CLEAN食塩水で洗い、しっかり脱水する
この時点では皮を剥いた身は鱗まみれのはずです。
そこで、海水程度の濃度にした食塩水を氷でしっかり冷やし、その中で身を軽くすすぎます。鱗や汚れを落としたら、すぐにキッチンペーパーで水分を拭き取ります。
刺身を作るときは、できるだけ水を使わず、鱗が身に付かないように丁寧に処理します。ただ、今回は火を通す料理であり、アジも数が釣れるため、作業効率を優先した方法です。
水分を拭き取った後は、さらに脱水シートで包み、冷蔵庫で1時間ほど休ませます。
余分な水分を抜くことで、身の水っぽさも減ります。最後に軽く塩を振り、揚げる直前まで冷蔵庫でしっかり冷やしておきます。
半生に仕上げるため、アジは揚げる直前まで冷蔵庫で冷やします。身の温度を低くしておくことで、衣を高温で揚げても、中心まで一気に火が入るのを抑えられます。
LARD脂身からラードを作る
揚げ物は、やはりラードです。
店で食べるトンカツやフライの、あの香ばしさとコク。その正体のひとつがラードです。せっかくプラチナアジでアジフライを作るなら、揚げ油にもこだわります。
肉屋やスーパーで、豚の脂身を用意します。
店によっては「ラードもありますよ」と言われるかもしれません。もちろん市販のラードでも作れます。ただ、せっかくなら脂身から自分で作りたいところです。
市販のラードは扱いやすく、すっきりしています。一方、脂身から作ったラードは、良くも悪くも豚脂らしい香りとコクが残ります。今回は、その力強さをアジフライに使います。
脂身は、店でミンチにしてもらえるならお願いするとかなり楽です。
塊で購入した場合は、1cm角ほどに切ります。脂でまな板も包丁もベトベトで滑りやすくなるため、手を切らないよう十分に注意してください。
RENDER脂身と水を、必ず最初から一緒に加熱する
細かくした脂身を、大きめのフライパンや鍋に入れます。
そこへ脂身の約10分の1量の水を加え、中火にかけます。今回は脂身1kgに対して、水100mlです。
水は必ず、加熱を始める時に脂身と一緒に入れてください。
油が出始めて高温になってから水を入れると、激しくはねます。というか爆発したみたいになります。飛び散った油に火が移れば、揚げ物火災につながる火災の教科書状態になります。途中で水を足すことは絶対にしないでください。
脂身と水を加熱し、ときどきかき混ぜます。
次第に脂身から透明な油が出て、フライパンにはそぼろ状の油かすが残ります。この油かすが小さくなり、カリカリに色づいてきたらラードの抽出は完了です。
火を止め、少し温度が下がるのを待ってから、金属製のザルなどで漉します。そのまま揚げ物用の鍋に移します。
今回の半生アジフライのコクを作るのがラードです。衣が香ばしく仕上がり、短時間の揚げでも満足感のある味になります。
BREADCRUMBS食パンから生パン粉を作る
パン粉も自分で作ります。
食パンを適当な大きさにちぎり、ブレンダーやフードプロセッサーで細かくします。ミキサーでも問題ありません。均一な粉にしすぎず、少し粒の大きさを残すと、揚げたときに立体感のある衣になります。
市販の乾燥パン粉でも当然作れますが、プラチナアジを使ったこだわりの半生アジフライには、こだわりの生パン粉のがよく合います、多分。
外側は軽くサクッとしながら、衣そのものが硬くなりすぎません。中のふわトロ食感を邪魔しない衣になります、多分。そんなにこだわるならパンも焼けと言われそうですが、白米派なのでパンは専門外です。
TARTAR福神漬けと紅生姜のタルタルソース
次に、タルタルソースを作ります。
まず玉ねぎをみじん切りにし、塩水に入れて辛味を抜きます。しばらく置いたらザルに上げ、キッチンペーパーでしっかり水分を取ります。
その後もザルや漉し器に入れておき、できるだけ余分な水分を落とします。玉ねぎに水分が多く残ると、タルタルソース全体が緩くなってしまいます。
福神漬けと紅生姜も、細かく刻みます。
今回は、歯ごたえ、甘さ、酸味を加えるため、この2種類を使います。ピクルスやらっきょう、しば漬けやいぶりがっこなど、好みの漬物に変えても構いません。漬物を入れず、卵と玉ねぎだけのシンプルなタルタルにしてももちろん十分美味しく作れます。
ゆで卵は、やや固めに仕上げます。
沸騰後10分以上を目安にし、黄身までしっかり固めます。半熟すぎると、混ぜたときに全体が緩くなり、タルタルらしい粒感が出にくくなります。
卵を1個だけ茹でるためにお湯を沸かすのが面倒なら、コンビニのゆで卵を使えば一瞬で解決します。
刻んだゆで卵、玉ねぎ、福神漬け、紅生姜、マヨネーズ、パセリを混ぜれば完成です。
BATTERバッター液を作る
いよいよ揚げる準備です。
まず、バッター液を作ります。
なんだよその液と言われそうなので説明すると、一般的なフライは、小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせ、パン粉を付けるという3段階で作ります。バッター液は、その小麦粉と卵の工程をひとつにまとめるものです。
工程を減らせるだけでなく、衣を均一に付けやすくなります。小麦粉と卵を別々に付けるよりもムラが出にくく、今回のような短時間揚げにも向いています。
ボウルに卵と牛乳を入れ、よく混ぜます。
そこへ小麦粉を大さじ1ずつ加え、その都度しっかり混ぜます。ダマが残らず、アジの表面に薄く絡む程度になれば完成です。
FRY180度のラードで15〜20秒
ラードを180度まで加熱します。
ここからは、手際とスピードの勝負です。
冷蔵庫で冷やしておいたアジを取り出し、バッター液にくぐらせ、生パン粉を付けます。
衣を付けたら、すぐに180度のラードへ投入します。
30cmほどのアジなら、揚げ時間はおよそ15〜20秒。
一般的なアジフライと比べると、驚くほど短い時間です。衣を高温で一気に固め、中のアジには火を通しすぎないようにします。
一度にたくさん入れても対応しきれないので1匹ずつ揚げます。
CUT取り出したら、すぐ半分に切る
直ぐに取り出し、軽く油を切ります。菜箸より、トングのがおすすめです。掴み損ねてモタモタしてる間に半生じゃなくなります。
火から上げたら、すぐに半分に切ります。
ここもかなり重要です。
短時間で油から引き上げても、アジフライの中では余熱による加熱が続きます。そのまま置いていると、狙った半生部分まで火が入ってしまいます。
揚げた直後に半分に切ることで、こもった熱を逃がし、余熱による火の入りすぎを抑えます。
そして何より、切った瞬間に見える半生の断面。
外側にはうっすら火が入り、中心には走水産アジの艶が残っている。
「半生だぞ」ドヤっ!と堂々と見せつけられるので、余熱対策と見栄えの一石二鳥です。
ラードで揚げる。アジは直前まで冷やす。揚げたらすぐ半分に切る。この3つが、外はサクッ、中はとろける半生プラチナアジフライを作る要点です。
TASTE外はサクッ、中はふわトロ
完成したアジフライは、外側の衣がサクッと香ばしく、中の身はふわふわでトロッとしています。
ラードのコクはありますが、アジそのものの味を消すほど重くはありません。短時間で揚げているため、脂の乗ったプラチナアジの身質がそのまま残っています。
噛むというより、口の中でほどけてなくなるような感覚。
「無重力アジフライ(700円/半身1切れ)」と呼びたくなるのもわかります。
普通に中まで火を通したアジフライも、もちろん美味しいです。身の旨味が凝縮され、ふっくらした食感が楽しめます。
同じアジ、同じ衣、同じラードで、半生としっかり火を通したものを両方作り、食べ比べてみるのもおすすめです。
SUMMARYプラチナアジを、とことん贅沢なアジフライに
走水産のプラチナアジを使い、半生アジフライを作りました。
アジを釣り、丁寧に骨と皮を取り、冷たい食塩水で洗い、脱水シートで水分を抜く。
豚の脂身からラードを作り、食パンから生パン粉を作り、福神漬けと紅生姜を入れたタルタルソースまで用意する。
かなり手間はかかります。
ただ、その手間をかけるだけの美味しさがあります。こだわり、手間をかけたという実努力と思い込みと自己暗示自体が美味しさのスパイスです。
普通のアジフライとは少し違う、東京湾のブランドアジを使った贅沢な一皿。
ぜひ一度、お試しください。