同じ東京湾で釣ったサワラでも、捌いてみると身質はずいぶん違いました。片方は脂が回って真っ白、もう片方は透明感が残る飴色。どちらもおいしかったのですが、40歳を過ぎた私が刺身で食べ続けたいと思ったのは、少し細身の個体でした。今回は10月2日と10月12日に釣ったサワラを、魚体、切り身、実際に食べた印象から比べてみます。
BODY SHAPE 釣った時から気になっていた、お腹の違い
初めてサワラ釣りに挑戦した10月2日。持ち帰った個体は、でっぷりとした紡錘形の魚体をしていました。胴に厚みがあり、お腹までふっくら。釣り上げた時点で「これは絶対うまいやつだ」と思わせてくれる姿です。
その10日後、10月12日に釣れたサワラは、少し印象が違いました。前の個体と比べると、お腹がやや引っ込んでいるように見えます。同じサワラでも、丸々とした感じがありません。
もちろん、釣れたこと自体はうれしい。ただ、前回の腹パンのサワラが頭に残っているので、「この違いは身にも出るのかな」と気になりました。
太っている魚の方が脂もありそう。そんな見た目の予想は、実際に捌いて食べても当たっているのでしょうか。
SIDE BY SIDE 魚体と切り身を並べると、違いがよく分かる
それぞれの魚体と切り身を並べたのが、こちらです。左が10月12日の少し細身の個体、右が10月2日の太った個体です。
太った個体の身は、真っ白でした。身全体に脂が回っているように見え、いかにも濃厚そう。サワラの身を「バターのよう」と例えることがありますが、まさにその言葉が似合う切り身です。
一方、細身の個体は、私の目には飴色に見える身でした。白く不透明になるほどの脂の入り方ではなく、身そのものの色と透明感が残っています。
写真は切り方や撮影条件が異なるので、色だけを厳密に比較することはできません。それでも、捌いた時の実物の印象として、両者の違いははっきりしていました。
ここまでは「やっぱり太い方が脂もすごい」という予想どおり。しかし、食べてみると、脂の多さだけでは好みを決められませんでした。
RICH AND BUTTERY 真っ白な刺身は、うまい。でも4、5切れで十分
太った個体の刺身は、見た目どおりの濃厚さ。脂の存在感が強く、いわゆる「バターのようなサワラ」という表現に納得する味でした。
左下に盛ったのは、マグロでいうトロの部分。ここが脂たっぷりなのは納得ですが、注目したいのは右側の背身です。腹身だけでなく、背まで白くなるほど脂が回っていました。でっぷりした魚体の中身は、期待どおりの濃厚なサワラでした。
どちらの個体もおいしいことは間違いありません。そのうえで、濃厚な脂を少しずつ楽しむか、ほどよい脂と身の旨味をじっくり楽しむか。今回感じたのは、おいしさの優劣ではなく、味わいの違いと自分の好みでした。
間違いなくうまい。そこには何の異論もありません。
ただ、40歳を過ぎたおじさんには、4、5切れで十分でした。
サシのしっかり入ったカルビと同じです。最初の一切れは最高。次もうまい。でも、そのまま何枚でも食べられるかというと、胃袋の返事は別でした。
魚の脂ならいくらでもいけると思いたいところですが、そうでもないようです。私の場合、脂が強すぎると途中で体が「もう十分」と言い始めます。
味に飽きたというより、一切れごとの満足感が大きすぎる。少量をじっくり楽しむなら、とても贅沢な刺身でした。
JUST RIGHT 飴色の身は、脂と旨味がちょうどいい
では、細身の個体はどうだったか。こちらも脂は十分に乗っていて、しっかりうまい。見た目が白くないからといって、脂のない淡泊な刺身ではありませんでした。
濃厚すぎず、身の旨味も楽しめる。食べた感想は「これぐらいがちょうどいい」です。
肉に例えるなら、脂の強いカルビに対して、旨味のあるおいしい赤身。どちらも魅力はあるけれど、今の自分が箸を伸ばし続けたいのはこちらでした。
比べた相手がかなり脂の強い個体だったので、つい「あっさりした方」と呼びたくなります。ただ、このサワラだけを食べていたら、普通に「脂が乗っていてうまい」と感じていたと思います。
釣った時には、お腹が少しへこんでいるのが気になりました。でも、食べてみれば何の不満もありません。刺身としての食べやすさまで含めると、むしろ自分好みの一匹でした。
INSIDE THE FISH 細身のサワラから出てきた、錆びた針と仕掛け
実は、10月12日に釣った細身のサワラを捌いていると、気になるものが出てきました。腹の中に刺さった、錆びた針先です。周囲の組織が針を包み込むように癒着しているように見えました。
しかも、これだけではありません。胃の中には、ハリスが付いたままの天秤タチウオ用と思われる仕掛けと針も入っていました。これまでにも釣り人の餌を食べ、仕掛けを切って逃げたことがあったのでしょうか。
こういうものを見つけると、「お腹が少しへこんでいたのは、この針や仕掛けの影響なのか?」と考えてしまいます。体内に残った針が、食べることや体の状態に何か影響していた可能性は気になります。
ただ、この魚は今回もイワシを食べて釣れています。少なくとも、その時には餌に食いついていたわけです。それだけで影響がなかったとも言えませんが、逆に、針が残っていたから細身だったと決めつけることもできません。
今回分かったのは、少し細身で、比較的脂の穏やかだった個体から、古い針や仕掛けが見つかったということ。この二つが関係しているのかは分かりません。それでも、魚体だけを眺めていた時には想像しなかった、この魚の過去が少し見えた気がしました。
INDIVIDUAL DIFFERENCES 同じ日に同じ場所で釣れても、魚体は違う
今回比較した魚は、釣った日が10日違います。ただ、「10日間でサワラの脂が落ちた」という話をしたいわけではありません。
実は、太った個体が釣れた10月2日にも、今回の10月12日の魚に似た、少し細身のサワラが釣れていました。その魚は同船した方に差し上げたので、私は食べていません。
つまり、同じ日に同じ場所で釣れたサワラにも、外見で分かる体形の違いがあったということです。
同日の魚を両方食べたわけではないので、その2匹の身質まで同じように違っていたとは言い切れません。それでも、今回の比較を経験すると、あの細身の個体はどんな味だったのか、少し気になります。
「今日のサワラは脂がすごい」とまとめたくなりますが、その日の釣果の中にも個体差はある。釣れた1匹だけで、その海にいるサワラ全部の味までは分からないんですね。
READING THE FISH 今回は、太った魚ほど脂があるという見立てどおり
今回の2匹では、でっぷりした魚体の方が身も白く、食べた時の脂の印象も強いという結果になりました。丸々とした魚を見るとおいしそうに感じる、あの感覚どおりです。
もちろん、脂肪量を測ったわけではありませんし、部位や保存条件まで揃えた比較試験でもありません。魚体の形だけで、身質を必ず見抜けるとまでは言えません。
それでも、釣り上げた時に感じた体形の違いが、捌いた時の身色や食べた時の印象につながったのは面白い経験でした。
今までも太った魚を見れば喜んでいましたが、次からは胴の厚みやお腹の形をもう少しよく見ておきたいところです。その場で写真を残しておけば、食べた時にまた答え合わせができます。
MY FAVORITE 脂たっぷりが最高、とは限らないお年頃
真っ白なサワラは、一切れの濃厚さと満足感が魅力。飴色のサワラは、脂と身の旨味のバランスが良く、もう一切れと手が伸びるおいしさでした。
脂が乗った魚を釣ればうれしいし、捌いて白い身が出てくればテンションも上がります。ただ、実際に自分がおいしく食べられる量まで考えると、脂は多ければ多いほどいいわけでもないようです。
今回は、少量なら真っ白な個体、刺身をしっかり楽しむなら飴色の個体。これが私の好みでした。
次も腹パンのサワラは釣りたい。でも、少し細身でもがっかりする必要はありません。40過ぎのおじさんには、そちらの方がちょうどいい晩酌になるかもしれません。
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