2026年11月2日更新。自作モデル・海上保安庁の推算・重ねて比較の3表示に対応した、現在の公開版の紹介です。
東京湾の潮は、上げなら南から北へ、下げなら北から南へ。ずっとそういうものだと思っていて、あまり疑っていませんでした。ところが、横須賀沖で改めて仕掛けの流され方を見ていると、それだけでは説明できなさそうです。
岸や海底の形で、場所ごとの流れはどう変わるのか。自分の釣り座には、どちらから潮が入ってくるのか。そんな疑問から、地図の上で潮の向きと強さを見る「東京湾の潮と流れマップ」を作りました。スマホでもPCでも、ブラウザから無料で使えます。
今回の更新では、選んだ日時の潮汐による流れを、流れる線と地点ごとの数値で表示するようにしました。横須賀沿岸は50m、東京湾中部は100m、それ以外は250mの計算格子を使い、海上保安庁の潮流推算も同じ地図で見比べられます。現場の潮をそのまま当てられるところまでは、まだできていません。観察と照らし合わせながら改善している試験公開版です。

WHYなぜ作ったのか
きっかけは、2026年10月24日の横須賀沖でのタチウオ釣りでした。台船周辺は岸から数kmほどで、東京湾の出入り口が狭まる観音崎にも近い場所です。当日の水深は60〜65mほど。ただ、岸からの距離が少し変わるだけで水深も大きく変わる、特徴的な地形でもあります。
船は風に対して立てた状態で、私は左舷中央の釣り座。朝8時半ごろ、正面に対して潮が右奥から左手前へ入ってくるように感じました。南北にはっきり流れるつもりで見ていたのに、思ったより岸に沿っていそうだったのです。
下げ止まりのあとも、流れははっきり反転しなかった
朝8時半は、潮見表では下げ止まりまで残り1時間ほど、というつもりで見ていました。そこからの変化も、予想していたほど単純ではありませんでした。
- 8:30ごろ:釣り座の右奥から左手前へ。岸に沿う成分がありそうに感じた。
- 9:30以降〜11:00ごろ:流れの受け方は弱くなったものの、明確に逆向きになった感触はなかった。
- 12:00前:一瞬、手前から奥へ払い出すように感じた。ただし、朝と完全に逆向きの流れが続いたわけではなかった。
これは流速計による測定ではなく、仕掛けや道糸から感じた観察です。船の動きや、水深による流れの違いも関係します。それでも、「潮見表の上げ下げが切り替われば、この場所の流れも反対になるはず」という考え方は、見直す必要がありそうでした。
そもそも、潮見表が示しているのは水位の上下です。その場所の流向や、流れが反転する時刻を直接示しているわけではありません。
観音崎のくびれと、海底の形が気になった
調べてみると、東京湾の流れには、岸線、岬、海底の起伏などが関係しているようです。環境省の解説には湾口の狭い部分で潮流が強まることが、港湾空港技術研究所の資料には観音崎周辺の潮汐渦や潮汐残差流についての記述がありました。
上げ潮が観音崎の角を回るところで、巻き込むような流れができるのではないか。岸に沿って流れるところや、沖とは違う向きになるところがあるのではないか。そうしたことを、地形を入れた計算で見てみたくなりました。
ただ、当日の流れを観音崎の渦で説明できたわけではありません。現場の観察と文献を出発点に、「地形と潮汐だけで動かすと、どんな流れになるのか」を見られるようにしたのが、このアプリです。
知りたかったのは、湾全体の上げ下げに加えて、自分が釣っている場所で、どちらから潮を受けそうかということでした。
FEATURESできること
好きな日時を選び、場所ごとの流れを見る
初めて開いたときの日付は、日本時間の今日です。別の日付も選べます。以前のように「10月24日の事例」と「それ以外の日付」で計算方式を切り替える画面ではなくなりました。
現在は、あらかじめ計算した流れを潮汐の周期ごとに分け、その成分を選んだ日時に合わせて合成しています。潮汐による流れを、日付や時刻を変えながら比較するためのモデルです。その日の風や雨などを取り込む予報ではありません。
海の上をタップすると、選択地点の流向、流速、モデル水深、使っている計算格子などを表示します。二本指で地図を拡大・縮小でき、「◎ 現在地」から今いる場所へ移動することもできます。現在地機能は、ブラウザで位置情報の使用を許可したときに利用できます。
3つの表示を切り替える
自作モデル(潮汐)
潮汐だけで動かした、水深方向に平均した流れの参考計算です。背景の色で強さを、流れる線で向きを見ます。弱い流れでも見えるように線の動きを速く表示しているので、流速は地点の数値を確認してください。
海上保安庁 潮流推算
海上保安庁の潮流推算図を、経緯度に合わせて同じ地図へ重ねます。毎正時の沖合41地点の推算を確認できます。岸際の任意の場所を公式に予報するものではありません。
重ねて比較
自作モデルの流れる線と、海上保安庁の推算図を一緒に表示します。向きや強さが似ているところ、食い違うところを見比べられます。公式の推算に合わせ、比較は毎正時です。

横須賀沿岸50m、東京湾中部100m、広域250m
横須賀沿岸の新安浦・猿島・馬堀・観音崎周辺は50m、観音崎の内側から海堡・中ノ瀬・木更津沖を含む東京湾中部は100m、それ以外の広域は250mの計算格子を使います。細かい格子の範囲に入ると、その格子の値を優先します。
50mは、50m単位で正確に予測できるという意味ではありません。計算上、点を置く間隔です。地形には防災科学技術研究所のGtTMから抽出した約50m間隔のデータを使っていますが、元の測量の密度や年代、基準面にも場所による違いがあります。狭い港内や台船の周りの細かな流れまで再現するものではありません。
地図の表示対象は、湾奥から勝山沖、三浦半島周辺は三崎付近まで。縮小すると青枠で表示対象、緑系の破線でモデルの格子範囲を確認できます。範囲内でも、陸地・浅場・計算していない場所には値を出しません。

猿島沖、台船(馬堀沖)、観音崎北、第二海堡、中ノ瀬、木更津沖などには参考点を置きました。赤い破線で囲った釣り場は大まかな仮の目安です。実際の釣り場の境界や、台船などの正確な位置を保証するものではありません。
地図の下で、1日の潮位も見る
地図の下には、気象庁の天文潮位を使った曲線を入れています。近い地点を自動で選ぶほか、東京・油壺・布良を指定できます。満潮・干潮や、選択した時刻の位置を見ながら、1日の上げ下げを確認できます。曲線をタップすると地図の時刻も変わります。

船首と釣り座から、流れの受け方を考える
船首の向きと、左舷・右舷などの釣り座を指定すると、自分の正面に対して流れをどう受けるかも確認できます。北東や南西といった地図上の方角を、「正面から入る」「払い出す」「横へ抜ける」という船上の感覚につなげるための表示です。

HOW TO使い方は3ステップ
- 日付と場所を選ぶ。最初は日本時間の今日が表示されます。地図を拡大して気になる場所をタップするか、「◎ 現在地」で移動します。
- 時刻と表示を変えて見る。時間のスライダー、8:30・11:00・12:00のボタン、潮位曲線を使い、流向と強さを見比べます。「海上保安庁」「重ねて比較」も試してみてください。
- 船首と釣り座を合わせる。船の向きと座っている側を選び、正面に入る流れなのか、横へ抜けるのかを確認します。実際の仕掛けの受け方と比べて使ってください。
釣り位置は、使っているブラウザに保存できます。Googleマップは運営側で設定済みなので、利用者がAPIキーを取得・入力する作業はありません。接続できない場合などは地理院地図へ切り替わります。
比べて分かったことと、まだ合っていないところ
気象庁の潮位の調和定数、久里浜〜金谷航路のフェリーで観測された流速、海上保安庁の潮流推算と、モデルの結果を比較しています。潮位や湾口中央の潮汐流には近い傾向が見られる一方、場所によって大きな差も残っています。
- 観音崎の北側:モデルは公式推算より流速を弱く出す傾向があります。
- 島や海堡の周辺:モデルと公式推算で流向が食い違う場所があります。猿島沖や横須賀沖は、公式図の矢印が重なって読み取れず、比較できていない点もあります。
- 10月24日の観察:概算位置での比較では、モデルは9時45分ごろに反転します。11時ごろまで朝と同じ向きに感じた観察とは、1時間以上ずれています。
別の観測や推算との比較を進めたことと、釣り場の流速・流向を十分な精度で検証できたことは別です。特に、台船周辺のその日の流れを当てられる状態にはありません。アプリでも「実測未検証の参考計算」と表示しています。
現在のモデルには、風、雨や河川水による流れ、密度差、黒潮の影響、二枚潮、干出・冠水を入れていません。水深方向に平均した流れなので、表層と底層が違う向きに動く場合、その差は分かりません。場所を細かく見られることと、現場の流れを正確に予測できることを分けて使ってください。
INSTALLアプリとして追加する
ブラウザからそのまま使えます。ホーム画面に追加しておくと、釣行前や船上で開きやすくなります。
- iPhoneのSafariで潮と流れマップを開きます。
- 共有ボタンから「ホーム画面に追加」を選びます。
- 名前を確認して「追加」を押します。
Androidでは、Chromeのメニューにある「ホーム画面に追加」などから登録できます。表示名や操作は端末によって異なります。地図やデータの取得には通信が必要です。
FOR TOKYO BAY東京湾の釣りでの使いどころ
タチウオ:キャストからの横引きが成立するか
テンヤタチウオで気になるのは、キャストの有効性が流れで変わることです。奥から手前へ入ってくる流れだと、20m以上投げたつもりでも、テンヤが狙う棚に着くころには足元近くまで戻ってきてしまうことがあります。
そうなると、投げた先から横方向に引く距離がほとんど残りません。水深、テンヤの重さ、沈むまでの時間、船の動きでも変わりますが、「投げた距離」と「棚で横引きできる距離」は同じではないと感じます。
正面から入るのか、横へ抜けるのか、払い出すのか。潮の受け方を見ながら、キャストして探るか、足元中心に組み立てるかを考える材料にしたいと思っています。横引きや誘いのイメージは、テンヤ海中挙動シミュレーターの紹介記事も併せてどうぞ。
サワラ:流れの向きが、釣り座の条件を変える
サワラでは、潮を先に受ける側と、船を通って払い出す側の位置関係が気になります。同じ左舷・右舷でも、船首の向きと潮の方向が変われば、先に魚へ餌を見せられる席の条件も変わるはずです。
船の向きと流れを一緒に見るために、釣り座の設定を入れました。魚の移動や船の流し方なども関係するので、この画面だけで有利な席を決め切れるわけではありません。現場で感じた流れを整理するためにも使えればと思っています。
アナゴ:アンカーで固定するからこそ、潮先が気になる
アナゴは、釣り座への潮の当たり方を特に気にする釣りの一つです。船をアンカーで固定するので、潮先に入れるかどうかが大きな条件になると感じています。船下へ入ってきた魚に、どの席の餌が先に見つかりそうか。そんなことを考える材料にしたいと思っています。
ただし、アナゴで知りたいのは底の流れです。二枚潮を扱わないこのモデルでは、表層と底層の違いを読み分けられません。まず船の向きと潮の大きな関係を見て、仕掛けの引かれ方や底取りの感触と照らし合わせて使ってください。
「上げだから、こっちへ流れるはず」と思い込んでいたところから、船上の見え方が少し変わりました。地形を入れ、日時を変え、公式の推算と重ねてみると、似ているところも、説明できないところもあります。その両方を見ながら、岸や海底の形と、仕掛けが流される感覚をつなげて考える材料になればうれしいです。現場の観察や、使って気づいたこともぜひ教えてください。
ペンギン1号@3rd Penguin Fishing Lab
参考資料・データ
- 環境省「東京湾水環境サイト」:東京湾の流動に関する解説。
- 鈴木高二朗(2013)「東京湾の海水交換と貧酸素化に及ぼす淡水流入と風の影響について」港湾空港技術研究所資料 No.1276:観音崎周辺の潮汐渦・潮汐残差流などの研究を参照。
- 海上保安庁「潮流推算」:毎正時の推算図を地図に重ねて表示。
- 気象庁「潮位表」:潮位曲線などに利用。
- 港湾空港技術研究所 UMI-POCHI・東京湾フェリーの観測データ:湾口の流速との比較に利用。
- Naotaka CHIKASADA(2020), Global tsunami Terrain Model(GtTM), NIED, DOI:10.17598/NIED.0021:CC BY 4.0。範囲抽出・再配列・計算格子への補間を行って利用。
- 国土地理院「地理院タイル一覧」:標準地図の表示に利用。Googleマップ表示時の地図・画像の権利表示は各画面に掲載。
このツールは釣りの流れを考えるための試験公開版です。航海・安全判断には海上保安庁の公式情報などを確認してください。画面例は2026年11月2日の公開版を撮影したもので、選択日時・地点によって表示は変わります。
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