ムラサキイカ、スジイカ、タルイカの3種類を、刺身、加熱料理、肝まで食べ比べてみました。見た目や大きさだけでなく、ねっとり感、歯切れ、旨味、火を通した後の柔らかさにはかなり違いがあります。どれも不味いイカではありませんが、アオリイカやスルメイカと同じ感覚で食べると、少し物足りなく感じるかもしれません。
SPECIESムラサキイカ・スジイカ・タルイカの種類比較
まずややこしいのが、それぞれの名前です。ムラサキイカの標準和名は「アカイカ」、タルイカの標準和名は「ソデイカ」です。「アカイカ」という呼び名は地域によって別のイカにも使われるため、この記事では釣り人に馴染みのあるムラサキイカ、スジイカ、タルイカで統一します。
| 比較項目 | ムラサキイカ | スジイカ | タルイカ |
|---|---|---|---|
| 標準和名 | アカイカ | スジイカ | ソデイカ |
| 学名 | Ommastrephes bartramii | Eucleoteuthis luminosa | Thysanoteuthis rhombus |
| 分類 | アカイカ科 アカイカ属 |
アカイカ科 スジイカ属 |
ソデイカ科 ソデイカ属 |
| スルメイカとの分類上の近さ | 同じアカイカ科 | 同じアカイカ科 | 別のソデイカ科 |
| 主な特徴 | 北太平洋を広く回遊する大型のイカ。加工品の原料にも使われる | 腹側に伸びる2本の筋状発光器が特徴 | 食用イカの中でも最大級。大きなヒレを広げると菱形になる |
| 主な呼び名 | ムラサキイカ、アカイカ | スジイカ | タルイカ、ソデイカ、アカイカ、セーイカなど |
分類上、ムラサキイカとスジイカは、スルメイカと同じアカイカ科です。一方、タルイカはソデイカ科で、今回食べ比べた3種類の中ではスルメイカから最も遠い位置にいます。それなのに、肝はタルイカが一番スルメイカらしい味だったのが面白いところです。
TASTE刺身・加熱・肝の食味比較
| 比較項目 | ムラサキイカ | スジイカ | タルイカ |
|---|---|---|---|
| 刺身の舌触り | かなりねっとり | しっかり | ねっとりというよりトロッとしている |
| 刺身の食感 | 柔らかく、舌にまとわりつくような食感 | 歯応えがあり、噛むと皮目がやや残る | 滑らかで食感は抜群に良い |
| 甘味・旨味 | かなり弱い。アオリイカなどと比べると体感で10分の1ほど | 弱め。噛んでも旨味の広がりが少ない | 物足りなさはあるが、ムラサキイカよりは旨味を感じる |
| 加熱後の食感 | ふわふわ。冷めても硬くなりにくい | 硬さが出て、歯応えが強くなる | ふわふわ。冷めても硬くなりにくい |
| 肝の見た目 | 赤みが強い | 特に強い印象はなし | 銀色にテカテカしていて、スルメイカの肝に似ている |
| 肝の味 | 比較的あっさりでやや苦味あり | ムラサキイカよりは旨味を感じる | 3種類で最も濃厚。ほかの2種類の倍ほど濃く感じる |
※食味は、今回食べた個体を比較した個人的な感想です。個体差、鮮度、冷凍期間、切り方などによって印象は変わるはず。
MURASAKIIKAムラサキイカは舌触り最高、しかし味が薄い
ムラサキイカの刺身は、とにかくねっとりしています。舌触りだけを見ればかなり優秀で、柔らかい身が舌にまとわりつくような感覚があります。しかし、その食感から期待するほど甘味と旨味がついてきません。というかほとんど感じません。
アオリイカ、ケンサキイカなどの旨味が強いイカと比べると、体感では甘味も旨味も10分の1くらいです。噛むと味が出てくるというより、食感だけ楽しむタイプ。どうしても味の物足りなさが目立ちました。
一方、火を通した身はふわふわで、冷めても硬くなりにくいのが長所です。天ぷらやフライ、炒め物など、加熱後の柔らかさを生かす料理には向いていそう。味の薄さも、昆布、肝、味噌、ニンニクなどで旨味を足してやれば食感をいかせそうです。
ANISAKIS紫外線で探しても見つからなかった
スルメイカといえば、個人的にはアニサキスがうじゃうじゃいるイメージがあります。ムラサキイカはスルメイカと同じアカイカ科なので、似たイカなら紫外線ライトを当てればサッと見つかるだろうと思っていました。
ところが、今回さばいたムラサキイカを紫外線ライトで確認しても、それらしいものは見つかりませんでした。これは少し意外でした。
もちろん、今回確認できなかっただけで、「ムラサキイカにはアニサキスがいない」という意味ではありません。紫外線ライトによる確認だけで、寄生虫の有無を完全に判断できるわけでもありません。あくまで今回食べた個体を確認したときの話です。
SUJIIKAスジイカはスルメイカに近い食感
スジイカは、3種類の中では最もスルメイカに近い食感でした。刺身にはしっかりした歯応えがあり、噛んだときに皮目がやや口に残ります。ムラサキイカやタルイカの滑らかさとは、かなり方向性が違います。
ただし、食感がスルメイカに近いからといって、旨味まで同じようにあるわけではありません。噛めば旨味が出てくることを期待しましたが、やはり旨味も甘味も薄め。歯応えに対して、味の伸びが3歩位足りませんでした。
加熱すると、ムラサキイカやタルイカよりも硬さが出ます。柔らかさを楽しむ料理より、細く切って炒めたり、一夜干しにしたり、濃い味付けで噛みしめる料理のほうが特徴を生かせそうです。
TARUIKAタルイカはトロッとした食感と濃厚な肝
タルイカの刺身は、ムラサキイカのねっとり感とは少し違い、トロッとした滑らかな舌触りです。食感は抜群に良いです。旨味や甘味はムラサキイカより感じるものの、それでもアオリやケンサキなどと比べるとかなり足りません。
身以上に印象的だったのが肝です。見た目は銀色というかマジョーラカラーでテカテカしていて、まるでスルメイカの肝のよう。3種類を並べて食べ比べると違いは明確で、タルイカの肝はほかの2種類の倍くらい濃厚さを感じました。
分類上、タルイカは3種類の中で最もスルメイカから遠いソデイカ科です。それなのに、見た目も味も一番スルメイカの肝に近い。分類上の近さと食味は必ずしも一致しないようで、今回の食べ比べで一番面白かった点です。
COOKING足りない旨味は料理で補えばいい
3種類に共通していたのは、食感は良いのに、甘味や旨味がとても少ないことです。素材の味を直接比べる刺身では弱点が目立ちますが、逆に考えれば、癖が少なく料理の味を邪魔しにくいイカともいえます。
ムラサキイカとタルイカは、油を使って火を軽く通して、味を足してやる料理、油を吸ってフワフワ感が増すのが良き。冷めた後も柔らかい。各イカの特徴をいかすなら肝を上手く使って味を出してやるのが良さそう。
スジイカは歯応えがあるため、細切りにして塩辛や炒め物にするほか、一夜干しにして旨味を凝縮させるのもよさそうです。他の2種同様、そのまま食べて足りないものを、調味料や調理法で足してやる。そうすれば、どのイカも十分おいしく食べられます。
CONCLUSION一番印象に残ったのはタルイカの肝
刺身のねっとり感ならムラサキイカ、スルメイカに近い歯応えならスジイカ、トロッとした舌触りと濃厚な肝ならタルイカ。それぞれに分かりやすい個性がありました。
どのイカも不味くはありません。ただし、素材そのものの甘味と旨味で食わせるアオリイカやスルメイカとは違い、足りない部分を料理で補ってやる必要があります。うまく調理すればおいしく食べられますが、正直なところ100匹は流石に無理なので、五反田の飲み屋に出荷します。
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